
「若者の街」渋谷
80年代には「渋谷パルコ」が東京カルチャーの拠点となり、90年代にはギャル文化や「渋谷系」といわれる音楽ムーブメントを生み出すなど、渋谷の街は、“若者文化の発信地”としても知られてきました。1960年代後半から1980年代にかけて、「渋谷西武」や「SHIBUYA 109」などの商業施設が続々とオープンしたことで、渋谷の街には多くの若者が集まるようになり、独特の文化を生み出したのです。それらの施設の多くは現在も健在で、「渋谷マルイ」は2015年に「渋谷モディ」へ変貌をとげ、「渋谷パルコ」も2019年に大規模リニューアルを果たし話題を呼びました。
ビジネスとカルチャーが交錯する一大エンターテイメントシティへ
2012年の「渋谷ヒカリエ」のオープンを皮切りに、渋谷駅周辺では大規模な開発が続いています。2017年には「渋谷キャスト」、2018年に「渋谷ストリーム」と「渋谷ブリッジ」、そして2019年には「渋谷スクランブルスクエア」と「渋谷フクラス」が相次いでオープンしました。また同年には超高層オフィスビル「渋谷ソラスタ」が竣工するなど、カルチャーだけでなくビジネスの街としても発展し続けています。
また、2020年にはIKEA(イケア)の渋谷進出があり、グッチ、ルイ・ヴィトン、プラダなどハイブランドも出店する複合施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」のオープンも話題になりました。
最先端のトレンドが集まる渋谷の飲食店
渋谷の飲食店トレンドをひとことであらわすのはとても難しいです。なぜなら、渋谷は東京都内でも1位2位を争うほど飲食店の多い街で、多様な客層に合わせるかのように、様々な飲食店が所狭しと密集しているからです。フランチャイズやチェーン店も多いですが、開発によって進出した、トレンド感溢れる新店から、明治・大正期から続く名店、そして昭和レトロな面影を今に残す「渋谷のんべい横丁」など、オリジナリティ溢れる店舗も数々軒を連ね、渋谷の街の雑多さを物語っています。
開発が進み、新店の出店が相次ぐ渋谷駅周辺にはトレンド感溢れる店舗が続々オープンしています。渋谷のスクランブルスクエアには、イギリスのデザイナー Tom Dixonがインテリアデザインをてがけるレトロフューチャーミュージック・バー『Paradise Lounge(パラダイス ラウンジ)』や、神楽坂の路地裏の人気店「茶寮」が手がけた新しい和カフェ「神楽坂茶寮」などがオープンし話題を集めました。また渋谷ストリームには、長野県の味噌蔵に由来を持つおしゃれな和食レストラン「酢重 インディゴ」や、ジビエ料理が楽しめる「ミートタバーン 煮込みや四兵衛」など、モダンな外観とコンセプチュアルな戦略で話題を集める人気店が勢ぞろいしています。
そして特筆すべきは、渋谷パルコの地下の飲食店街にオープンした、昆虫食が楽しめる「獣肉酒家 米とサーカス 渋谷パルコ店」や、「ヴィーガン居酒屋 真さか」といった、未来の食生活を先取りしたような新店です。真さかでは、種類豊富なヴィーガン唐揚げやヴィーガン餃子が楽しめ、ベジタリアン・ヴィーガンのほか、健康志向の人たちからの熱い支持を受けています。
花街の面影を残す 円山町の老舗
新しい街のイメージが強い渋谷ですが、今からほんの30年ほど前までは、渋谷にも花街が存在しました。30軒余りの料亭が軒を連ね、80名もの芸妓さんがいたそうです。現在その歴史を残す店は、「良支(よしき)」「料亭三長」「割烹三長」「おでん割烹ひで」の4軒だけになりましたが、当時の花柳界の名残を感じることのできる貴重な名店が、今なお、渋谷の街には存在しています。
息の長い名店も多数
意外にも渋谷周辺には、息の長い名店も多いです。2019年にくじら料理が食べられる創業70年の「元祖くじら屋」が、建物の老朽化などの理由から移転したことは驚きをもって報じられましたが、渋谷には明治・大正から現代に続く名店が今なお存在しています。そんな老舗といわれるお店の中には、1914年創業の「精養軒」や、明治時代中期創業の「魚力」など、昔ながらの中華や定食屋、洋食などが食べられる懐かしの大衆食堂といった趣のお店が多くみうけられます。
昭和レトロなのんべい横丁
渋谷駅そばの路地裏に、古きよき昭和の街並みを残す飲み屋街「渋谷のんべい横丁」は、そのレトロな佇まいで、昔馴染みの常連客から若者まで、幅広い世代の人々を惹きつけています。赤提灯とのれんがよく似合う雰囲気の横丁で、冬季限定の鰤しゃぶが名物の「黍(kibi)」や、代々受け継いだ秘伝のニラ玉が一押しの「ふじまさんち」など、個性的な店が軒を連ねています。横丁という名前からは想像できないかもしれませんが、カジュアルなビストロ「ビストロダルブル渋谷本店」など、コンパクトでおしゃれなお店も人気を集めています。渋谷呑んべい横丁を盛り上げる実行委員会が結成されるなど、令和の時代にも根強いファンの多い横丁です。
大人の街 奥渋谷
ネオンきらめく雑多な街渋谷は、歩いていて人にぶつかることも珍しくないほど、とにかく人口密度が高い街ですが、実は大人のためのチルスポット「奥渋谷」という裏の顔ももっています。「オクシブ」「裏渋(うらしぶ)」などとも呼ばれるこのエリアは、渋谷駅から徒歩10分〜20分ほどで行くことのできる場所で、飲食店に限らずセンスの良い店舗が点在しているのが特徴です。
サードウェーブコーヒーの先駆け的存在である富ヶ谷の「FUGLEN COFFEE ROASTERS TOKYO(フグレントーキョー)」や、東京でできたてのフレッシュチーズが食べられる神山町の「SHIBUYA CHEEZE STAND(渋谷チーズスタンド)」、ナチュールワインが楽しめる宇田川町の「ビストロ ピパル」など、渋谷駅周辺の喧騒から離れて、大人の時間を楽しめる飲食店やスポットが充実しています。
飲食店においてはどんな業態が出店チャンス!?
渋谷で営まれている飲食店のうち、出店業態では和食・居酒屋・バーがトップ3の座を占めており、和食が827店舗、次いで多いのが居酒屋の798店舗、そしてバー・お酒系の601店舗となっています。眠らない街・渋谷だけに、夜遅くまで営業しているお店が多い印象です。
この結果は渋谷における飲食店需要を推し量るバロメーターであり、渋谷での開業を目指すうえで見逃せないデータといえるでしょう。