居抜き物件を内見する時に「なんとなく」の基準で見てしまっていませんか?
飲食店の居抜き店舗選びには、厨房などの設備チェック以外に「居抜き特有」の注意すべきポイントがあります。
低コストで出店しやすいメリットもある一方、居抜き特有のリスクがあることも忘れてはいけません。
間違った内見・内覧方法で物件を決めてしまい、「スケルトン物件からお店を作る以上に投資が余計にかかってしまった店」「集客や配膳など店舗運営に支障がでる店」を幾度も見てきました。
たとえば、焼肉屋を開業する場合、グリストラップ(油をろ過する装置)・ダクト設備(煙・脱臭・排気のための設備)が必要です。
同じ飲食店物件でも、カフェなど軽飲食店の居抜き店舗では上記設備がない店舗も多く、どちらかの工事をするだけでも多額のお金がかかります。
それでは居抜き物件のメリットである、既存設備の活用で安く早く開業するということができません。
ここでは店舗物件の探し方・見極め方でセミナー講師も勤めるプロが、飲食店居抜き物件の内見時に外せない3つのチェックポイントを解説します。
その物件で「やりたい業態はできるか?」内見時のチェックポイント
検討している物件のガス・電気容量は足りていますか?
いわゆるインフラ設備と呼ばれる、ガスや電気の容量変更には多大な工事費がかかります。
プロパンガスの物件であれば少額で容量を変更することはできますが、都市ガスの場合は道路を掘削し引き込まれているガス管を太くする必要があります。
距離や位置にもよりますが、工事には100万以上の費用がかかることも。
ガス容量の号数を確認するには、店外などにあるメーターに書いてありますので内見時にチェックしましょう。
電気も同様です。
建物自体の電気の容量が足りないと、増設工事だけで200~300万円の費用。
無駄な費用をかけないためにもしっかり確認しましょう。
参考までに、一般的に必要なガス容量は、軽飲食(カフェやバーなど)であれば3~6号、重飲食(焼肉や中華など)であれば10号以上が必要です。
煙や臭いの強い業態の場合、ほぼ必須になってくるのがダクト。
現地でダクトの有無や状態を確認するのはもちろん、物件を案内してくれる不動産会社にも設備の確認を行いましょう。
・(ダクトがない場合)設置しなければいけないか
・(ダクトがある場合)このままで良いのか、新設工事が必要か
ダクトの管が残っているかいないかでも費用は大きく変わってきます。
例えば店舗がビルの1階で、ダクトを屋上まで上げなくてはならなかった場合。
100万を超える工事になることも。
必ずしもダクトを建物の上まで上げられるというわけでもありません。
ダクトを上げるには、建物上部までのルート確保が必要。
途中にあるメーターや室外機によりルートが確保できず、ダクトを上げられないこともあるのです。
その場合、ダクトが原因で希望業種では入居できないことがあります。
内見時にダクトの有無とともに、工事の必要性についても確認しましょう。
もし工事が必要な場合、その工事が該当物件で施行できるか専門業者にみてもらう必要があります。
油が多い業態の方はグリストラップを確認
埋め込み型のグリストラップの設置には、60万~100万円かかります。
油を多く使う業態(中華や焼肉などといった重飲食)の方は、内覧時にグリストラップの有無を確認しましょう。
グリストラップは、シンクなどで使った水を直接排水せず、油やごみなどをろ過する装置。
油は、そのまま流すと冷え固まり、水道管が詰まってしまいます。
水道管が詰まると、業者に依頼し高圧洗浄機で配管を清掃しなければなりません。
実はグリストラップがなくても保健所の許可は降ります。
あまり多くの油をつかうような業態ではない限り、グリストラップは必須ではありません。
なくても保健所の許可には影響はありません。
最近ではシンクの下に置けるタイプのグリストラップもあり、設置コストは10万円前後。
検討物件にグリストラップがなかったとしても、そこで開業できる可能性を探ってみることです。
何屋かという業態だけではなく厨房や基礎設備を確認
立地と設備は理想に近い物件。
自分がやりたい業態は和食だが、紹介された居抜き物件はイタリアン。
こんな物件が出てきたときあなたは見に行きますか?
物件を探している方なら、おわかりいただけると思いますが、全ての希望を満たした物件は滅多に出てきません。
いや、全ての条件を満たした物件は出てこないと考えておいた方がベター。
店舗現況と希望業態が異なっていても、安く開業できる可能性は十分残されています。
なぜなら、大きなコストがかかるのは厨房や設備。
仮にお店をスケルトンから作る場合、設備投資の7割は厨房や基礎設備。
残り3割が客席・ホール部分の和食店の居抜き店舗でまわりの対象顧客が少ない物件よりも、イタリアンの居抜き店舗でまわりの対象顧客が多い物件のほうが商売の成功に近いことも十分考えられます。
物件の内覧を行うときは、前テナントの業態だけに目を向けるのではありません。
流用できそうな設備はもちろん、周辺マーケットや競合状況なども加味したうえで正しい判断を行いましょう。内装工事。
内外装は基礎設備や厨房器具ほどコストをかけず改装が可能です。
そのため、設備が使える業態であれば十分見に行く価値があります。
和食業態を出店予定でイタリアンの物件を見に行かないのは、候補物件の数を自ら減らしているようなものです。
和食店の居抜き店舗でまわりの対象顧客が少ない物件よりも、イタリアンの居抜き店舗でまわりの対象顧客が多い物件のほうが商売の成功に近いことも十分考えられます。
物件の内覧を行うときは、前テナントの業態だけに目を向けるのではありません。
流用できそうな設備はもちろん、周辺マーケットや競合状況なども加味したうえで正しい判断を行いましょう。
和食店の居抜き店舗でまわりの対象顧客が少ない物件よりも、イタリアンの居抜き店舗でまわりの対象顧客が多い物件のほうが商売の成功に近いことも十分考えられます。
賃貸借と造作譲渡の契約内容は必ずチェック
造作譲渡の対象範囲を確認
何が譲渡対象かわからないと、造作譲渡料(前オーナーから造作物を買うお金)が適正かどうかもわかりません。
店舗設備などの造作譲渡品は基本的に残置されることが多いですが、確認は必要です。
物件によって事情はさまざま。
どの物品が造作譲渡の対象になっているか明確にしておかないと、トラブルの元。
内覧時は物品を見ながら、売り主から説明を受けられる貴重な機会です。
お互いの認識違いが起きないよう、このタイミングで必ず確認しておきましょう。
注意すべきは、口頭確認では証拠が残らないということ。
取り引きが進んだ際には、譲渡対象物をリスト化してもらうと確実性が増します。
譲渡物品が壊れていないか
どの物品が造作譲渡の対象になっているか明確にしておかないと、トラブルの元。
内覧時は物品を見ながら、売り主から説明を受けられる貴重な機会です。
お互いの認識違いが起きないよう、このタイミングで必ず確認しておきましょう。
注意すべきは、口頭確認では証拠が残らないということ。
取り引きが進んだ際には、譲渡対象物をリスト化してもらうと確実性が増します。
リース契約の有無を確認
どの物品が譲渡の対象になるかにも関わりますが、「リース契約設備の有無」は聞いておきましょう。
居抜きの取り引きでトラブルが起きやすい部分です。
リース契約された設備の所有権はリース会社にあり、閉店後は回収されてしまうもの。
リース物品だという認識がないと「譲渡されると思っていたのに、無くなっている」という事態が起こってしまいます。
リース物品の譲渡は、3パターン考えられます。
①リース会社が回収して、物品がなくなる
②売主がリース会社から買い取りのうえ、造作物として譲渡
③リース契約を買主が継承する
(審査や契約内容によるため、継承できるかはリース会社次第)
内覧では次の4つを聞いておきましょう。
・リース契約の設備はあるか
・リースの残債はいくら残っているのか
・リース残債を一括返済するのか
・リースの継承は可能なのか
リースの活用は初期投資を抑えることができる便利なサービスですが、売却時にはトラブルが発生しやすくなります。
慎重に進めてください。
清掃/引き渡し状況を確認
物件の引き渡しの状態も確認しておきましょう。
居抜き物件の場合、モノが散乱していて大掛かりな清掃が必要な場合もあります。
基本的にはこちらから提案しなければ、現状(そのままの状態)で引き渡されます。
「清掃業者をいれて綺麗にしてもらえないか」と家主や管理会社に交渉を行った場合、3つのパターンが考えられます。
1、清掃を断られ、そのままの状態で引き渡し。
2、清掃業者をいれた後に引き渡し。
3、清掃は入居者が行い、他箇所(物件取得にかかる費用)で減額提案をされる。
1つ目と2つ目は皆さんも想像しやすいかと思いますが、3つ目について詳しく説明します。
3つ目は費用は考慮するが、手間をかけたくない大家さんとの交渉でよくある話です。
清掃業者の手配は次の入居者が行い、費用は他の部分で補てんしてもらえるケース。
契約時に必要な金額の減額、またはフリーレントといった方法で交渉に応じてくれる場合が多いです。
フリーレントとは家賃の免除。
「1ヶ月のフリーレント」なら、1ヶ月分賃料の支払いなしで借りることができます。
ただし、このように交渉を進めるには、家主のツボを押さえた行動が必要です。
まずは私どものような、店舗や不動産の専門家に相談を持ち掛けてみることをオススメします。
周辺マーケットを調査
せっかく現地に行ったなら、物件だけ見て帰るのは正直もったいない。
競合店や周辺環境は出店後の集客に大きく関わります。
検討物件の周辺も見てまわりましょう。
見ておきたいチェックポイントは、主に3つ。
① 周辺の施設
集客は周囲から良い影響も悪い影響もうけます。
例えば、風俗施設や消費者金融は、女性や子どもを集客しづらくします。
逆にスーパーがあると主婦が通うため、周辺のお店は主婦を集客しやすくなります。
どのような施設があるか、どのような客層がその施設に集まっているか確認しておきましょう。
② 競合店舗
ライバル店の数と質を見ておきましょう。
その店舗の入店状況と回転スピードをチェックします。
実際に、ランチに自信を持っていた開業者が競合店をみて、商品企画・事業計画を練り直したケースもあります。
「この安さで、この味・ボリュームを提供しちゃうの!?」と視察時に気付き、事前に提供メニューを修正することができました。
お客様は周辺のお店との比較で入店するか否かを決めるため、競合店の実力を図っておくことは重要です。
③ 通行料に合った賃料か
賃料は駅からの距離や人通りで設定されています。
通行量を確認し、集客のしやすさに見合った設定になっているか確認します。
④ 商圏の調査
またそれ以上に詳しく町のことを調べたいのであれば、商圏調査をするのもおすすめです。
この街はどんな街なのか、どのような心理で街を歩いているのか。
遊びに出かける街?
職場などがあり働きに来ている街?
それとも住宅などが密集する街?
最寄り駅の乗降客数は?
などといった周辺情報を持っているのも飲食業で勝ち抜く大きなカギになります。
東京都では昼間・夜間に分けて人口を発表しています。(平成22年)
このように予想をつけることはできます。
昼の人口>夜の人口
⇒働きに来ている人が多い、オフィス立地
昼の人口<夜の人口
⇒そこを拠点に生活している、住居立地
⑤ Googleストリートビュー活用
気になる物件を全て、現地に行って周辺を確認している時間はないかもしれません。
そんなときは、Google ストリートビューが役立ちます。
現地に行かなくても、携帯電話やパソコンからでも、ある程度現地の周辺状況を把握できます。
駅からの道筋や距離をみたり、周辺にどのようなお店があるかは、Google ストリートビューで見ることができます。
まずは、このような地図で確認し、次に実際に現地を視察するステップにすると時間が有効活用できます。
効率的に内見を行い、良い物件を早く見つけられるようにしていきましょう。
内見時のチェックポイントまとめ
〇 ガス/電気の容量が足りるか
〇 煙、臭いの強い業態:ダクト
〇 油が多い業態:グリストラップ
〇 造作譲渡の対象範囲
〇 設備の故障がないか
〇 リース契約があるか
〇 引き渡し時に清掃がされるか
〇 周辺のマーケット