駅から遠いエリアで「毎日利用してくれる客」をターゲットにする
駅前には必ずといっていいほど、『スターバックスコーヒー』や『ドトールコーヒー』などのコーヒーショップチェーンが出店しています。はじめてその駅を訪れた人でもすぐに見つけることができ、ちょっと休憩やおしゃべりをしたい時などに重宝する存在です。一方『カフェ・ベローチェ』は駅前の一等地というよりも、駅から少し歩いたところやメインの通りから一本入った路地などに位置していることが多くあります。駅の近くでどこか店はないかと探している人にとっては、少しわかりづらいロケーションといえるでしょう。
しかし、「毎日利用してくれる客」をターゲットにする場合には好都合です。近隣で働いている人や住民だからこそ知っているような立地を狙って出店することで、ゆったりと落ち着いた地元の人が通いやすい店にすることができます。
『カフェ・ベローチェ』のような立地であれば、駅前では獲得しにくい未来の「常連客」に最初からアプローチが可能です。駅方面からの通行人の流れはもちろん、地元住民やオフィスワーカーの通行エリアなどを事前にリサーチしておくことが重要です。
住宅地への抜け道で「女性客」や「ファミリー層」を狙う
『やきとり家すみれ』は、商店街の中ほどでの出店が目立ちます。商店街の入口付近ではなく、住宅地への抜け道となっているような奥まった場所であることも少なくありません。さらに焼き鳥屋ではあるものの、サラリーマンだけでなく、女性やカップル、ファミリーと、あらゆる客層を取り込むことに成功していることがわかります。成功している理由には、女性客を意識した内装やメニュー構成の工夫ももちろん考えられます。しかし立地の選択もまた、勝因の一つといえるでしょう。ビジネス街というよりも「商店街から住宅街への通り道」に開業したことで、女性客やファミリー客にもアプローチできています。自宅の近くにおしゃれな焼き鳥屋があれば、遅い時間でも安心して楽しめるので、近隣の住民にも人気です。
個人店は特に、『やきとり家すみれ』のような立地が理想といえます。しかし住宅地に寄り過ぎても、なかなか集客は難しいでしょう。周囲に活気があることもまた、飲食店営業において大切なことだからです。コンビニや銀行、郵便局、スーパーマーケットなど、通行客が回遊しやすい店舗が周りにあるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
あえて住宅地寄りで「地域一番店」を目指す
『高円寺ビール工房』は、あえて住宅地寄りに開業し、成功をしている珍しい飲食店です。「街のビール屋さん」をコンセプトに、『阿佐ヶ谷ビール工房』『荻窪ビール工房』など現在5店舗を展開しています。ターゲットはその土地に住む、地元のお客様。口コミや紹介によってじわじわと客数を増やしていく戦略が功を奏しています。駅前のように短期間で一気に集客することは難しいかもしれませんが、地元客をターゲットにしている分、客数が急減することも考えにくいでしょう。「地域名+ビール工房」という明快かつこだわりのある切り口で、地域一番店を複数作り上げている好例です。
ただし一般的には、住宅地に近いエリアで飲食店を成功をさせるのは非常に難しいところ。よほど魅力的な商品がなければ、わざわざそこに行く意味がないからです。住宅地エリアでの飲食店の成功例はまだまだ少なく、繁盛店を作るには工夫が必要といえるでしょう。
個人で出店を目指す場合、資金面の問題から一等地では難しい部分があります。今回紹介したような1.5〜2.5等立地を選択することもあるでしょう。アクセスの悪い立地になれば一般的には不利だといわれていますが、逆に特定の客層が増える可能性もあります。全体の通行量だけに惑わされず、ターゲット層の通行量をよくリサーチし、繁盛店づくりにいかしてみてはいかがでしょうか。