「競合調査」で何がわかる? その必要性とは
調査対象の飲食店が、すでに何年間か営業していて地域の客に浸透している場合、その店から多くのことを知ることができます。■客層とニーズを知ることができる
その地域ではサラリーマンやOLが多いのか、主婦層や学生が多いのか、少人数の客が多いのかグループ客が多いのかなどといった客層を知ることができます。また、ランチ需要はあるのか、ティータイムや打ち合わせ利用が多いのかなど、客層ごとの「ニーズ」も合わせて知ることができます。客層とニーズの調査はそれほど複雑ではありませんが、時間帯や曜日によって変化する可能性もあるのでじっくりと調査する必要があります。
■客単価を知ることができる
次に重要なのは「価格相場(客単価)」です。コーヒーやビール1杯の価格やランチの最低価格、夜の客単価は調査しておきたいところ。最低価格がどれくらいだと入りやすいのか、客単価が安い店と高い店では客層やニーズにどのような変化があるのかなども調査しておくと良いでしょう。
競合調査においては、上記の「客層」「ニーズ」「客単価」の3点と、その関連性の分析が非常に重要です。時間も手間もかかる作業ですので、調査対象を何店舗かに絞って時間帯別、曜日別などでリサーチを進めていくことをお勧めします。
ただし、競合調査は調べたら終わりではありません。自店のポジショニングを決めるための指針を作ることが目的です。調査を丁寧に行うことで、自店のコンセプトもより明確になるのです。
同業態の調査だけでは不十分。店を利用する「理由」を見極めよう
調査対象とする店舗はどのように決めるのが良いでしょうか。例えばカフェを開くならカフェ、居酒屋を開くなら居酒屋を調査、となりがちですが、それだけでは不十分です。前述の通り、飲食店の利用者には様々な客層やニーズがありますので、同業態だけでなく、同じ客層やニーズで利用されている店も対象にしましょう。例えば、お店の利用者が業態だけで店を選んでいるとは限りません。居酒屋に行きたい時は、「仲間とワイワイ騒ぎたい気分」であったり、ファストフードに行きたい時は、「時間がない時」であったり、その店を利用する「理由」が違うのです。利用者の気分、利用シーン、予算などの視点で自店と近い店を競合調査の対象とすれば、きっと新しいヒントが見つかるはずです。
また、調査に加えた方が良い項目として、「初来店のきっかけ」と「リピートしたくなる仕掛け」があります。新規集客をするためにどんなことをしているか? どのような利用シーンを打ち出しているか? などをチェックすることは非常に重要なポイント。また、リピート率の秘訣は実際に店に行かないとわからないことが多いですが、盛り付けや接客、意外性などでしっかりと印象を残しているはず。通いたくなる理由や口コミしたくなる要素が見つかれば記録しておきましょう。
競合店調査後の戦略と注意点とは?
競合店調査を進めていくことで、様々なデータや情報を得ることができます。しかし、競合店を真似ても個性のある店を作ることは難しいでしょう。価格帯やニーズのデータは信頼できるものといえますが、そこから一歩踏み込んで新しい価値観を打ち出すことが重要です。具体的な方法としては、競合店調査で得られたデータを元に「優位性」を作り上げることです。例えば、地域のランチ相場が900円の場合、自店で700~800円の料理を提供することができれば、「安さ」や「利用しやすさ」において優位に立っているといえます。また、「差別化」も効果的な戦略です。仮にランチ価格が1200円と高くても、ゆっくり寛げる空間であったり、高価な食材を使ったりと他店と利用動機の区別をすれば、集客に繋げることが可能になります。
つまり競合店調査において大切なことは、実在するニーズを元に潜在的なニーズを掴むことだといえます。800円のランチが相場だからといって、全てのお客様がそれに満足しているとはいい切れません。地域によってはより安いもの、反対により高いものが実際には求められている可能性もあるからです。
中食や大手コンビニによるイートインスペースの増加により、飲食店は業種や業態の壁を超えて戦略を考え直す時期に来ているといえます。利用客は一体何を求めているのか、また、これからはどのようなものが求められるのか? 常に必要とされる店であり続けるためにも、競合店調査は新規出店時だけでなく、継続的に行っていくことをお勧めします。