
商圏とは何か?
商圏とは、「店の利用者やターゲット層が生活している範囲」のこと。業種や業態が異なれば、商圏も異なります。例えば、日常的に利用するコンビニの商圏は極めて狭く、高級品の購入や休日に出かけるデパートの商圏は非常に広いと考えることができます。飲食店の場合は、住宅地のコーヒーショップであれば徒歩5分以内、駅前商店街にあるレストランであれば3駅隣まで、郊外の駐車場付きのファミレスならば車で20分圏内……というように、立地や業態によって商圏の範囲は大きく変化します。珍しい業態の飲食店であれば、電車や車で数時間かけて通う人もいるため、商圏はさらに広くなる可能性があるでしょう。
このように、商圏とは単純に店からの距離だけで決まるものではありません。特に近年は業態の多様化や店の使い分けなどにより、商圏範囲の考え方も複雑化しています。しかし、商圏を正確に見極めることができれば、様々な戦略を練りやすくなるというメリットもあります。
商圏調査の方法とは?
商圏調査を行う前に、まず商圏を設定します。自店のターゲットや利用動機などから、徒歩圏内か、何駅先までか、それとも車で何分以内までなのか、商圏範囲をしっかりと見極めることが重要です。商圏を設定したら、商圏内にある競合店をいくつかピックアップしてみましょう。競合店は、「業態」が似ているもの、「利用動機」が似ているものを選びます。例えば和スイーツのカフェを開業予定であれば、同業態の寛げる雰囲気のカフェやインスタ映えを狙ったスイーツを提供している店を調査するといいでしょう。また、利用動機が似ている店は、必ずしも同じ業態とは限りません。クレープ店とたこ焼き店、レストランと居酒屋が競合店となることも考えられます。調査の際には、客単価や客層、集客状況などのデータを収集すると良いでしょう。
また、競合店の調査だけでなく、商圏内の「通行の流れ」を確認することも大切です。徒歩圏内であれば路地裏まで、車移動であれば様々な方向からお店に向かってみるなど、実際に徒歩や車で移動しながら調査することをお勧めします。同じ商圏内においても通行量の多い道とそうでない道が明確になり、より正確な商圏の見極めができるようになるからです。地図をプリントアウトするなどして、商圏と競合店を細かく調査していきましょう。
商圏が広範囲にわたる場合には、インターネット上の統計やマーケティングサービスを利用すると便利です。安価に手早く商圏内の人口や年齢層、同業態の調査をすることができます。また、「商圏外」にも、ターゲット層や商圏範囲の大きさが似た店舗があることもあるので、可能であれば調査対象にすると良いでしょう。

商圏調査のメリット、活用方法
最後に、個人経営の飲食店の方が確定申告の際に疑問を持ちやすいポイントを5つご紹介します。商圏調査を行うことで、様々な経営戦略が練りやすくなります。例えば、広告宣伝にどのツールを使うかを決める際、商圏が狭く中高年層がターゲットなら新聞折込やポスティングを中心に、エリアが広く若い世代がターゲットならインスタ広告を使うなど、的確な判断ができるようになるでしょう。
さらに、新メニューの開発やサービス内容を決定する際にも役立ちます。商圏が狭いのか広いのか、徒歩で来店する人が多いのか、電車で来る人が多いのかなどによって、メニューのネーミングや価格設定、クーポン内容、持ち帰りメニューの有無などの決定がしやすくなるからです。
また、商圏調査によってターゲットに合わせた商品やサービスを提供できれば、立地条件が悪い店の場合でも集客がしやすくなるというメリットもあります。例えば、山奥でも繁盛しているレストランの場合は商圏を広く考え、あらかじめ遠くからわざわざ来るような人をターゲットにしています。商圏と戦略が一致したことによる好結果といえるでしょう。
商圏調査の注意点
商圏の範囲は常に変化しています。近隣にショッピングセンターができたり、幹線道路が整備されたりといった理由で、商圏は広くなることも狭くなることもあります。常に商圏内の情報を収集し、柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。特に、商圏を広く設定している場合は、同業種だけでなく異業種やインターネットサービスの影響も受けやすくなり、競合が多くなることも。広い視野でリサーチを継続しましょう。反対に商圏を狭く設定している場合には、商圏外の影響を受けにくいものの、悪い評判が広がりやすいというデメリットがあります。地域に根ざしたサービスの提供がカギになるでしょう。
これまで商圏調査していないのであれば、ぜひ一度行い、自店のサービスやメニューの見直しに活用してみましょう。