コンテナを改造してテナントに
貨物を輸送するために使用する大型の箱「コンテナ」を活用した建築物「コンテナハウス」。ホテル、雑貨店、オフィス、スタジオ、住居と、すでに幅広く利用されています。飲食業界では、そのおしゃれな雰囲気がマッチするカフェやレストラン、コーヒースタンドなどをコンテナハウスで開業する方が増加中。また、「キッチンカーに比べて、もう少ししっかりとした店舗を持ちたい」といった理由からコンテナハウスを選ぶ方もいるようです。従来型の物件に比べると単純なつくりをしているため、「簡単に開業できる」「開業費用が安い」「移転できる」といったイメージがあるコンテナハウス。しかし、必ずしもそうとは言えません。コンテナハウスの特性をしっかり理解した上で開業を考える必要があります。
テナントにできるコンテナは限られる
コンテナハウスを理解する上で、必ず知っておきたいことは、「コンテナハウスは建築基準法が規定する建築物とみなされる」ことです。つまり、建築基準法に適合していなければならず、例えば基礎とコンテナ部分が適切に結合していない、柱や梁がないなどの場合は違反建築物となってしまいます。また、ドアや窓を設置するための開口工事によって強度が基準以下になってしまうことも考えられます。そのため構造強化の工事を実施したり、中古ではなくて新品のコンテナを用意したりする必要があります。こうした理由から、国内では、本物のコンテナを使うのではなく、建築用に造られたコンテナを活用してつくるケースは少なくないようです。コンテナハウスで開業するメリット
では、コンテナハウスでの開業にはどんなメリットがあるのでしょうか。代表的なものを取り上げます。■工期が延びにくい
コンテナハウスは工場で組み立てたものを開業場所に運び込み、現地で電気水道ガスの設置工事を行うケースがほとんどです。現地で行う作業が少ない分、工期が延びるリスクは下がります。できるだけ早く開業を進めたい方にはメリットと言えるでしょう。■デザインの自由度が高い
複数のコンテナを組み合わせることもでき、一般的な物件とは異なる印象の店をつくることができます。SNSを利用したプロモーションとの相性は良いでしょう。■建物ごとの移転が可能
コンテナハウスを移動できる状態にすれば、店の内装や外装を変えずに移転することができます。ただし移動できる状態とは、ライフラインを外した状態を指します。移転後に再び設置工事が必要であるため、移転は可能ですが決して手軽ではありません。コンテナハウスで開業するデメリット
コンテナハウスでの開業には、もちろんデメリットもあります。■コンテナのサイズは一定
多くの場合、コンテナのサイズは決まっているため、設置できる場所が限られます。コンテナを設置場所まで運ぶには、道路や周囲の環境が受け入れられる広さでなければなりません。一般的なコンテナの場合、1つの大きさは、4坪・8畳程度。コンテナ1つでも店舗にできますが、調理スペース、トイレなどを整えると、座席スペースは限定され、天井の高さも決まっています。コンテナの数の追加やレイアウトの工夫が求められます。■初期費用は安くない
設備・内装工事や土地代などの必要経費をあわせると、従来型店舗で開業するよりも費用を抑えられるわけではありません。コンテナ数を増やすことになったりすれば、開業資金が想定を上回るおそれもあり得ます。コンテナハウスは目を引く建築物ですが、開業するとなると、イメージとは異なる点が少なくないと感じるはずです。コンテナハウスでの開業を目指しつつも、従来型の店舗での開業も視野に入れておくことで、チャンスを逃さないようにしてください。