入居時には大家の審査を受ける
飲食店を開業したい物件が見つかったら、大家さんと賃貸契約を結ばなければなりません。そのために、貸してもらえるかどうかの審査を受けます。これが大家さんとの最初の関わりです。大家さんがもっとも心配するのは、借主に家賃を継続して支払える能力があるかどうかです。店が繁盛するかどうかはオープンしてみないとわからないため、申込書を見て、どんな連帯保証人がつくか、家賃保証会社で与信の補完は必要か、といった点を考えます。また、入居後にトラブルになるような要素がないかもチェックします。
面接と事業計画書の提出は、信頼関係を築くためのチャンスです。必ず、しっかりと練り上げた事業計画書をつくりましょう。経歴、店のコンセプトや店内・外装のイメージ、メニューの内容、収支計画などを詳しく文字や図表にして、真摯な思いを伝えたり、大家さんからの質問に答えたりすることが重要です。
さまざまなトラブルを想定し、事前に相談を
実際に店舗を運営しはじめてからも、大家さんとの関わりは継続します。時にはそれぞれの考え方に相違があったり、コミュニケーションが足りなかったりして、トラブルに発展することもあるはずです。よく起きるトラブルとその対策を知り、未然に防ぎましょう。■修繕費の負担
水道管のつまりやあふれが発生したり、ネズミの被害で壁に穴が空いてしまったりして、修繕が必要になることがあります。経年劣化のことがあれば、使用方法が原因のこともあり、どちらが修繕費を負担するかが問題になります。「原則は賃貸人に修繕義務がある」という契約をする大家さんがいれば、全額もしくは1部を負担してくれる場合もあります。修繕の負担に関しては契約書に文言が入るものの、起き得ることを具体的に考え、話し合ってみることが大事です。事前に話し合いを設けておけば、お互いに不信感を持つことや、修繕の対応が遅くなることを防げます。修繕費の負担を押し付けてしまうと、家賃が値上げされる原因になったりすることもあるので、話し合いを通し、大家さんの考え方を知っておきましょう。
■営業時間の延長
運営基盤が整ったころ、営業時間を延長するというのは飲食店経営をする中で自然なことです。深夜帯の営業時間を伸ばす場合、深夜酒類提供飲食店営業届を所轄の警察署に出せば、法律上の問題もありません。ただし、賃貸借契約時に提出した事業計画書内で深夜営業はしないと記載したにもかかわらず、許可を得ずに深夜営業をはじめた場合は大家さんとのトラブルになりかねません。近隣から苦情が出て、所轄の警察署からの指導も入っても店舗側が改善しない場合、賃貸借契約の更新を拒否されたり、契約解除や立退き明渡しを迫られたりする恐れも。営業時間の変更や深夜営業の希望がある場合、その時になって相談するのではなく、あらかじめ大家さんに伝えておくと安心です。
■業態変更
例えば、高級レストランから大衆居酒屋に変更となれば、通りから建物を見たときの印象も客層も変わります。落ち着いた雰囲気の飲食店を大家さんが望んでいて出店の許可がおりた場合などは、業態変更がトラブルになつながることがあります。業態変更をする際は、「事前に大家さんの書面による了解をとる」ことが大事です。メニューを変更する場合でも同じで、例えば軽飲食に分類されるカフェがカレーを調理して提供する場合、においが出るようになったことを問題視する大家さんも。メニューの変更により、においや煙が出るようになるなど、近隣に影響がでるようなことが起きる場合、事前に伝えるべきでしょう。
良好な関係を望むのは、大家さんも借主も一緒です。どんな場面でもていねいにコミュニケーションをとり、大家さんを味方にしていきましょう。