雑居ビルとそれ以外のビルの違いは?
雑居ビルとそうでないビルの違いをまず確認しましょう。すべて事務所として使われているビルはオフィスビル(1階など一部店舗の場合あり)、飲食店や物販店、美容室などが入居していて一般の人が訪れるビルは商業ビルと呼ばれます。これに対して雑居ビルは、オフィス、飲食店、クリニック、スクールなど、種々雑多な業態のテナントが入居しているビルのことです。なかには住居が混在している建物もあります。「雑居ビル」は法律などで明確に定義された言葉ではありませんが、一般財団法人日本消防設備安全センターの「立入検査標準マニュアル」(平成26年)では、以下3つに当てはまる建物を「小規模雑居ビル」と規定しています。
(1) 3階以上の階が、消防法施行令別表第1に掲げる(2)項又は(3)項に掲げる用途に用いられていること。
(2) 直通階段が一つのみ設けられていること。
(3) 統括防火管理者の選任を要すること。
(1) の「消防法施行令別表第1に掲げる(2)項又は(3)項に掲げる用途」とは、飲食店、カラオケボックス、遊技場などのことです。「3階から上のフロアに飲食店があり、ビルの階段は1つのみ」というのが、消防における小規模雑居ビルの特徴のようです。
雑居ビルの家賃はなぜ安い?
雑居ビルは商業ビルと比べると家賃に割安感があると言われていますが、人気エリアの1階路面店舗などはそこに当てはまらず、実際の賃料は個別の物件次第です。しかし一般的な傾向として家賃が割安となる理由として、以下が挙げられます。雑居ビルの家賃が安い理由(1)古いビルが多い
雑居ビルも多くの場合、最初はオフィスビルや商業ビルとして建てられています。長い間にテナントが入れ替わるうち、結果として雑居ビルと呼ばれるようになった場合があります。そんな築年数が古く設備も古いため、家賃が相場より低い傾向になります。雑居ビルの家賃が安い理由(2)メインストリート沿いでない
大通り沿いには大型のオフィスビルや商業ビルが並び、一本路地を入った通りには雑居ビルがひしめき合っている、そんな立地で家賃は割安となります。雑居ビルの家賃が安い理由(3)人気がない
落ち着いたオフィスを探している企業や経済的に余裕がある飲食店は、雑居ビルを敬遠します。供給量に対して需要が少ない場合、家賃は抑えられます。近隣トラブルなど、雑居ビルのデメリットは?
雑居ビルの家賃の安さ=人気のなさの背景には、近隣トラブルが起きがちという事実があります。学習塾が飲食店の匂いや騒音にクレームをつけたり、ゴミ出しや共有スペース使用のルールを守らないテナントがいたりといったケースです。雑居ビルではテナントの入れ替わりが激しいことも、テナント同士の信頼関係構築の妨げになることがあります。そのほか、雑居ビルのデメリットは以下のようなものが考えられます。
雑居ビルのデメリット(1)害虫・害獣などの問題がある
ネズミやゴキブリといった害虫・害獣は、古い建物の空間に住み着いている場合が多く、新しくオープンした店にも影響をおよぼす場合があります。雑居ビルのデメリット(2)集客に難がある
駅周辺のエリアの中でも、裏通りなどにあることが多い雑居ビルは「わかりにくい立地」になる場合があります。特に最初の集客は、看板や広告での工夫が必要になるでしょう。雑居ビルのデメリット(3)エレベーターの問題
小中規模の雑居ビルはエレベーターが少なく、旧式のものである場合も。たとえば最上階の居酒屋で宴会客の利用があると、他の階の利用客がスムースに移動できなくなる可能性もありえます。エレベーターの台数や動き、積載可能人数をチェックしておきましょう。飲食店が雑居ビルへの入居を検討するときの注意点は?
ここまで雑居ビルの懸念材料を述べてきましたが、トラブルばかり起きているわけではありません。おそらく、何も問題なく飲食店が営業している雑居ビルの方が多いでしょう。雑居ビルの空中階で繁盛している店も少なくありません。雑居ビルへの出店を検討するのであれば、ポイントをおさえてチェックすることが大事です。注意点として、以下があります。雑居ビル入居のポイント(1)他のテナントをチェック。飲食店が多いビルが望ましい
雑居ビルの各フロアに飲食店が入っている場合、ビル全体での集客力があるので、空中階でも一定の人を呼び込むことが可能です。飲食店以外のテナントについてもできるだけ情報を集めて、協調してやっていける環境かをチェックします。雑居ビル入居のポイント(2)共用部分やゴミ集積所をチェック
エレベーターや1階ホールの手入れや清掃が行き届いているか、階段が物置になっていないか、ゴミ集積所の管理状態などをチェックします。他の飲食店から出る匂いや煙の換気状態も要確認。清潔で快適な空間であれば雑居ビルでも問題なく人が訪れるでしょう。雑居ビル入居のポイント(3)オーナーの情報をチェック
安い賃料でテナント募集がされていても、オーナーが物件の維持管理にかかる経費を惜しんでいるようであれば困ります。借りた物件に問題が発生したときにきちんと対処してくれるかも気になるポイントです。物件や建物をチェックするときにはまず自分の目でよく見て、さらにできれば内装会社の人など飲食店物件にくわしい第三者にも見てもらうことがおすすめです。できるだけコストをおさえつつ、自分にベストな飲食店開業を目指しましょう。