駅近と感じるのは、駅から「徒歩5分」圏内
駅近物件には、アクセスがよい、人通りが多いため集客につながる、広告費をかけずにプロモーションができるといったメリットがあります。ただ「駅近」に明確な定義はありません。さまざまな媒体のアンケート調査を見ると、多くの人が「徒歩5分まで」を駅近ととらえ、徒歩10分にまで広げると、駅近と感じる人と感じない人が半々くらいに分かれるようです。駅近のお店かどうかは人ぞれぞれの感覚で評価されていることがわかります。駅から徒歩5分圏内の物件となれば、家賃は一気に高くなりますし、競合が多く存在します。さらに、そもそも駅周辺の利用者と店の業態やコンセプトがマッチしていなければ、メリットを享受できません。そこで一度考えてみたいのが「商圏範囲」です。
徒歩エリアの商圏範囲は半径500メートルが目安
「商圏範囲」とは、自店舗を利用する可能性が高い顧客が生活したり、働いたりしている範囲のことです。都市部の場合、飲食店利用者は徒歩で移動することが多いため、商圏範囲は半径500メートル程度と言われます。不動産業界で用いられる「徒歩1分」は80メートルと定められており、これに従えば半径500メートルは5~10分で移動できる距離。例えば回転数が求められるラーメンや丼ものの店舗なら、オフィスエリアから徒歩10分以内の場所にあれば、ランチタイムにそのエリアからの集客が見込めそうです。
一方、郊外の場合は車移動で飲食店に来店します。その場合、10分間で移動できる5キロメートル程度を商圏範囲とみなすことができるでしょう。ただし、幹線道路に近かったり、競合が少ない業態であったりすれば、広範囲から目的を持って来店してもらえる可能性は十分にあるため、1次商圏、2次商圏を定めるとよいでしょう。

飲食店の立地の悪さは戦略的にカバー
では、不利な立地に出店する場合、どうしたらよいでしょうか? 一般的にマイナス要素になるのは、人通りや交通量が少ない、地下店舗や空中店舗である、駐車場がない・駐車しづらいといったケースでしょう。こうしたマイナス要素があっても、人気店になっている店舗は存在します。以下で解説するように、戦略的に対策をしていくことが重要です。〇視認性を上げる
見つかりづらい立地にある場合は、視認性を上げることが重要です。看板の設置は必須ですが、現在はSNSの活用がより求められている時代です。
SNSを活用し、店内の雰囲気、メニューはもちろん、価格、サービス、アクセスなどが伝わるように定期的に発信していきましょう。「SNSが良いことはわかっているけれど……」という方は多くいらっしゃいますが、1歩踏み出すと、徐々に反応が出てきたり、活用方法がどんどんわかってきたりして、手応えを感じることもあるため、ぜひ取り組んでみてください。
看板の設置は、気になって来たのに店が見つからず断念してしまうようなことを無くすためにも重要です。看板では、文字だけでなく写真も使って雰囲気を伝える、価格がわかるようにすることが大切です。
〇リピーターを増やす
来てくれたお客さまにはファンになっていただき、リピーターを獲得していきましょう。わざわざ来る意味のある、ここでしか食べられないようなメニューを考案し、定番メニューと期間限定メニューを用意することで、リピーターの増加が期待できます。店内やSNSで今後スタート予定の新メニューについての予告も発信し、「また来よう」と思える仕掛けをしていきましょう。
〇駐車場を確保する
車移動が一般的な地域なら、駐車場があることも大切なポイントです。必要に応じて近くの土地を借りるほか、近くのコインパーキングとの提携など、車で来店できる環境を整える必要があります。
物件選びをするうえで、立地は非常に重要であるものの、駅近にしか目を向けないのは残念なこと。商圏範囲の考えを取り入れたり、集客対策に力を入れるなどして、店舗づくりを進めてみてはいかがでしょうか。